日常やら思ったことやら綴り散らし。
graphiTe
スポンサーサイト
--年 --月 --日 (--) --:-- | 編集
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
Una cadena~連鎖する双つの心~ ○第三話○
2008年 11月 25日 (火) 21:15 | 編集
下の記事で申したリレー小説でございます。

私が書かせていただいたのは第三話なので、先に一話二話をお読みください^^

一話は、二話のページから飛べます!

ちなみに一話は友達のメノ(plan B)、二話は同じく友達のsino*(*sugarless soda*)です!

http://yaplog.jp/rakia/archive/334
↑二話。



それでは、続きで三話へどうぞ。。。


第四話は友達のチヒロが担当しています!
リンクのbravo the worldからいけます!







Una cadena ~連鎖する双つの心~

○第三話○


九条は電話回線を切り、目の前に拡がる機械を操作した。
すると、今まで光を発していたモニターが停止。続けて他のモニターに画像が浮かび上がった。
九条は何かを考え込むように画面を見つめていたが、後方を一瞥した。

扉の近くに、一人の女が立っていたのだ。艶やかな着物が、闇の中に浮いている。

九条は驚いた様子もなく、女に向かって手を上げた。すると女も同様に手をあげ、細い指をひらひらと動かした。

「迎えに行った方がよろしいですか?」女は言った。
「いや、いい。あれ如きの為に君の手をわずらわせるわけにはいかないさ」
「じゃあ質問を変えましょう。始末しますか?」
控えめに塗られた紅色が歪んだ。どこか愉しむ様に言葉を発し、クスクスと忍び笑いさえ洩らした。
九条は一瞬の間を置き、答えた。
「……その必要もない。あれはあれで役に立つんだ」
九条の言葉を聞いた女は少し意外そうな顔つきをした。
「あら、そうですか?たまにはああいう種類を試してみたかったのですが…、まあ致し方ないでしょう」
そうして、手に持っていたものを幽かな部屋の照明にかざした。
不気味な銀色の光を放つそれを、愛おしそうに眺める。

「…相変わらず、『中毒者』だな」
彼女の様子を見た九条は、畏怖と揶揄が半々といったところで、吐き捨てるように言った。そして視線をモニターへと移す。
だが、その目はすぐに釘付けとなった。


「…こんなところに『蠅』が飛ぶなんて、無粋ではありませんか?」


振り向けば、女は美しい笑みを浮かべて、右腕を横様に広げていた。
その手に、先程まで持っていたものは無かった。

「……確かに、そうだな」
「安心してください。始末しましたから」
女はくるりと向きをかえ、扉へと歩き出した。
九条は黙ってそれを見ていたが、女の手が扉にかかったところで、彼は言った。
「君は、あれをどう見る?」
女は振り向き、訝しげな表情を九条に向けた。
「めずらしいですね。貴方が私に意見を求めるなど」
「いいから答えろ。君は、“赤塚零の覚醒”についてどう思う?」
女は暫く無言だったが、やがてにこりと笑った。
「別にどうも思いません。ただ、私の遊び相手が増えるかもしれないことを意味するだけですよ」





部屋から女が立ち去った後、九条は長い溜息をついた。
彼女の実力に対しては、一目置いている。だが、やはり恐ろしさの方が勝ってしまうのだった。
額に滲んだ汗を、手の甲で拭った。
―――彼女をまだ、戦闘用として使うわけにはいかない…。
九条は再度、モニターに視線を移した。



アンセルド帝国の国旗が映されたモニター上で、一匹の小さな蠅が、鋭利な刃物によって貼り付けにされていた。









『ねぇ、ママ。この後、お話はどうなるの?』
『宿屋で出会った娘さんと結婚して、幸せに暮らすのよ』
『えーつまらなーい』
『ふふ。そんなことはないわよ。妹は、兄に幸せになることを祈っていたの。だから、このエンディングはふさわしいわ』
ふわりと、花のような笑顔を向けられたところで、記憶は途切れていた。




なぁ、母さん。
あなたも、そう思ってるなんて、ないよな?
俺が幸せになることを祈ってるなんて、奇麗事いわないよな?

そうじゃなかったら…俺がここにいる理由が本当に分からなくなっちゃうよ。




俺は右目にそっと手を当てた。あの激痛が嘘だったかのように、平生だった。
もう、あの声も聞こえない。

「復讐…」

ぼそりと呟いた言葉は、風に紛れて消えていった。

あれから俺はどうすることもできず、ただ呆然としていた。
しかしそれは、少しの間だけ。
俺は適当に荷物をまとめ、家を出て行った。

全て、そのままにしておいた。
家具類は乱れたままだったし、もちろん、タイラは伸びたまま。
だからといって、弊害は何もないだろう。


だって、あの家で過ごした今までは、虚構にしかならないのだから。

俺にはアンセルド帝国という本当の母国があって。
日本はただの憎悪の対象であって。

俺がここに居る理由もそれにあって。

本当の母さんは。
…母さんは。



そう思うと、もうあの家には居られなかった。
あの家の全ては造り物だってことが、分かってしまったからだ。
そして造った張本人が、この日本のどこかに存在する。
俺の記憶は、いつ誰が何の為に造ったのだろうか。

「どうすっかなー…」

公園のベンチに座り、空を見上げた。
綺麗な青空は、今この身に起こっていることは何も関係がないと言わんばかりに澄み渡っている。

これからどこへどう行けばいいのか、まったくもって見当が付かなかった。


あまりにも唐突すぎて、脳の理解速度が追いついていないという現実。
不安定な足場に立っている感覚で、“彼女”の声の記憶を手繰り寄せた。



―――覚醒しなさい、ゼロ―――


覚醒って、何なんだよ。
第一俺は、この日本にたった一人で復讐をしかけようとしていたのか?それはあまりにも無謀というものだ。
だったら、仲間が居るはずだ。
あの声の持ち主は、仲間なのかもしれない…。
でも、“彼女”はどこにいるんだ?
どこから俺に話しかけてきているんだ。

思わず、顔を顰めた。
思い出すなら、一気に思い出してくれた方がよかったのに…。
でも、そんなことを嘆いたってどうすることもできない。
理解速度は遅いが、受容速度が速い自分には、今のところ感謝だ。
じゃなければ、今頃俺は頭がおかしくなっていただろう。


不意に話し声が聞こえてきて、俺は無意識に顔を上げた。

何人かの学生が、騒ぎながら歩いていた。この時間帯からすると、サボりのようだった。
その時、ある考えが俺の脳をよぎった。

「……榊」

急に、大きく心臓が脈打った。
どくん、どくんと不規則な鼓動が頭に響いているように思えた。
息が詰まり、深く吐き出す。

俺は、気付いてしまった。

俺には本当の名前があって、国があって、母さんがいて、目的があるならば。
日本での小さい頃の記憶は、全て造られた物だということ。
つまり、
関ノ谷榊という幼馴染の記憶も、造り物だということ―――。

「…っ、まさか…っ」
自然と、自嘲気味の笑みが漏れた。
ありえない。だって榊は俺の親友だ。いつも、俺を気にかけてくれていたじゃないか。
それに俺だって、榊を信用している。

もし仮に、榊は造られた物の一環だったとしても、榊は何の関係もないはずだ。
大体、よく考えれば、榊以外の小さな頃の友達だって、該当してしまう。全てが全て、俺を騙していたなんて有り得ない。

今、この一瞬でも親友を含め、友を疑ってしまったことを、俺は恥じた。


それでも、不安は拭いきれなかった。


くそ、何だかさっきよりも焦りが増長している気がする。
受容速度だとか、関係無くなってきてしまった。


本当に、どうすればいいんだ―――?


俺は両腕で頭を抱え込んだ。
ここには誰もいない。
誰も俺を助けてはくれないのだという思いが、感情も、感覚も支配していった。
そして改めて、俺は一体どういう人間なのかという疑問も押し寄せてくる。

誰でもいい。誰か、教えてくれ、俺はどうすればいいのかを。



誰か、誰か、誰か―――。


頭の中でいくら呼んでも、叫んでも、手を差し伸べてくれる人間はいない。
俺の記憶を呼び覚ました、“彼女”でさえ、もう俺に語りかけてくることはなかった。


それでも。

無意味なことだと解りつつも、俺は呼び続けた。


国の情景を想い浮かべようとした。

仲間の顔を、想い出そうともした。

だが、脳裏に浮かぶものは日本の姿と、榊と、同級生と。




それだけだった。





遠くで、学生達の笑い声が聞こえてきた。

スポンサーサイト
Comment
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL :
comment :
password :
secret : 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright (C) graphiTe all rights reserved.
designed by polepole...

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。